スマートフォンの充電に欠かせないモバイルバッテリー。通勤や旅行、災害時の備えとして持ち歩いている方も多いでしょう。しかし今、リチウムイオン電池が原因の火災のなかで最も多いのがモバイルバッテリーです。
本記事では、モバイルバッテリーが発火する主な原因と、使用をやめるべき危険なサイン、家庭でできる予防策と万一のときの備えをわかりやすく解説します。
モバイルバッテリーの火災は1年で約7割増
総務省消防庁の調査によると、2025年(令和7年)にリチウムイオン電池等から出火した火災1,297件のうち、モバイルバッテリーが原因のものは482件でした。2024年の290件から約7割も増えており、製品別で最も多くなっています。
また、製品評価技術基盤機構(NITE)には、2021〜2025年の5年間にリチウムイオン電池搭載製品の事故が2,140件寄せられています。事故は春から夏にかけて気温とともに増え、8月にピークを迎える傾向があります。
モバイルバッテリーが発火する主な原因
消防庁の調査で原因が特定されたモバイルバッテリー火災では、次のような原因が多く見られました。
| 主な出火原因 | 件数(2025年) | 具体例 |
|---|---|---|
| 外部からの衝撃 | 41件 | 落とした、踏んだ、カバンの中で強く押された |
| 高温下での使用・保管 | 23件 | 夏の車内に放置した、直射日光の当たる場所に置いた |
| 製品の欠陥 | 18件 | リコール対象製品、品質の低い製品 |
出典:総務省消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表(令和7年)」
電池の内部は非常に薄い膜で仕切られており、衝撃や熱で傷つくと内部でショートが起き、急激に発熱することがあります。これが「熱暴走」と呼ばれる現象で、発火や破裂につながります。
使用をやめるべき危険なサイン
東京消防庁は、次のような状態のリチウムイオン電池製品に注意するよう呼びかけています。ひとつでも当てはまる場合は、使用を中止し、メーカーや販売店に相談しましょう。
- 膨らんでいる、変形している
- 落としたことがある
- 充電中や使用中に熱くなる
- 充電できない、充電がすぐ切れる
- 熱がこもる場所で使っていた
特に「膨らみ」は、電池内部でガスが発生している可能性を示す重要なサインです。無理に押しつぶしたり、分解したりするのは大変危険なので絶対にやめてください。
家庭でできるモバイルバッテリーの発火対策
NITEは、リチウムイオン電池搭載製品の事故を防ぐために「3つのC」を呼びかけています。
1. 賢く選ぶ(Cool Choice)
購入前に、販売元の情報やリコール情報、PSEマークの有無を確認しましょう。極端に安い製品や、販売元がはっきりしない製品は避けるのが安心です。
2. 丁寧に使う(Careful use)
高温になる場所での使用・保管や、強い衝撃・圧力を避けましょう。夏場の車内や、窓際など直射日光が当たる場所に置きっぱなしにしないことが大切です。また、充電するときは燃えやすい物の近くを避け、指定の充電器を使いましょう。
3. 正しく捨てる(Correct disposal)
モバイルバッテリーを燃えないごみなどに混ぜて捨てると、ごみ収集車やごみ処理施設の火災の原因になります。環境省によると、リチウムイオン電池が原因とみられるごみ処理施設や収集車の火災は2025年度に36,760件(速報値)と過去最多になりました。自治体のルールや回収協力店を確認し、正しい方法で処分しましょう。
持ち歩くとき・外出先での注意点
モバイルバッテリーは持ち歩いて使う製品だからこそ、外出時の扱いにも注意が必要です。
- カバンの中で押しつぶさない:満員電車や荷物の詰め込みすぎで強い圧力がかかると、内部が損傷するおそれがあります
- 落とさない工夫をする:ポケットやカバンの外ポケットに入れたままにせず、落下しにくい場所に収納しましょう
- 車内に置きっぱなしにしない:NITEは、暑い日には座席の上なども含めて車内全体が高温になると注意を呼びかけています
- 屋外では日なたに置かない:砂浜やベンチ、窓際など直射日光の当たる場所に置くのは避けましょう
- 鍵や小銭と一緒にしない:端子部分に金属が触れないよう、ポーチなどに入れて持ち歩くと安心です
レジャーや旅行の多い夏は、特に事故が増える時期です。季節に合わせて扱い方を見直しましょう。
万一発火したときのために備えておくこと
どれだけ気を付けていても、発火のリスクをゼロにすることはできません。万一のときに慌てないよう、次のことを確認しておきましょう。
- 対処の流れを知っておく:火花や煙が激しく噴き出している間は近寄らず、収まってから大量の水や消火器で消火し、十分に冷やす。安全な場所から119番通報する
- 住宅用火災警報器を点検する:早く気付けば、それだけ早く避難や初期消火ができる
- 充電する場所の近くに初期消火の道具を置く:寝室やリビングなど、充電することが多い場所の近くに備えておく
特に夜間の充電中に発火した場合、消火器を取りに別の部屋まで行く時間が命取りになりかねません。すぐ手に取れる場所に、軽くて扱いやすい消火具を置いておくと安心です。
家庭の備えに:初期消火スプレー「Key-L119S」
エアゾール式簡易消火具「Key-L119S(キーエル119S)」は、リチウムイオン電池の火災に対応した初期消火スプレーです。重さは540gと軽く、片手で使えるため、力に自信のない方や高齢の方でも扱いやすいのが特徴です。
- 冷却・浸透・窒息・安定化の4段階で熱暴走を抑え、再燃を防ぐとされています(メーカー資料による)
- 放射時間は約28秒と、一般的な粉末消火器(約10〜15秒)の約2倍
- 粉末が飛び散らないため、室内で使っても後片付けがしやすい
- フッ素フリーで、PFAS・PFOA・PFOSは不検出
- 5年間の長期保管に対応
天ぷら油火災やストーブ火災にも対応しているため、キッチンやリビングの備えとしても活用できます。
よくある質問
Q. 膨らんだモバイルバッテリーはどう捨てればよいですか?
A. 膨張・変形した電池は、通常の回収ボックスで受け付けていない場合があります。お住まいの自治体の案内を確認するか、メーカー・販売店に相談してください。
Q. 充電しながらスマートフォンを使っても大丈夫ですか?
A. 製品の取扱説明書に従って使用してください。充電中に本体やバッテリーが異常に熱くなる場合は、すぐに使用を中止しましょう。
Q. Key-L119Sは家庭用の消火器の代わりになりますか?
A. Key-L119Sは簡易消火具で、初期の小さな火を対象としています。消防法で設置が義務付けられた消火器の代わりにもなりません。ご家庭でも消火器とあわせて、手元の備えとしてご活用ください。
まとめ:予防と「すぐ使える備え」の両方を
- モバイルバッテリーの火災は2025年に482件と、1年で約7割増えている
- 主な原因は外部からの衝撃、高温下での使用・保管、製品の欠陥
- 膨らみ・発熱・落下歴などの危険なサインがあれば使用を中止する
- 「賢く選ぶ・丁寧に使う・正しく捨てる」を心がける
- 充電する場所の近くに、片手で使える初期消火の道具を備える
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