スマートフォンやモバイルバッテリー、電動工具、電動アシスト自転車など、私たちの身の回りにはリチウムイオン電池を使った製品があふれています。便利な一方で、リチウムイオン電池から出火する火災は年々増えています。「水をかければ消えるのか」「消火器で大丈夫なのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、リチウムイオン電池の火災が消えにくい理由である「熱暴走」の仕組みと、火災が起きたときの正しい初期消火の手順、日頃からできる備えを解説します。
リチウムイオン電池の火災は増え続けている
総務省消防庁の調査によると、2025年(令和7年)にリチウムイオン電池等から出火した火災は全国で1,297件でした。2022年の601件、2023年の739件、2024年の982件と、毎年増え続けています。このほか、ごみ収集車やごみ処理施設での火災も213件ありました。
| 年 | 出火件数(全国) |
|---|---|
| 2022年(令和4年) | 601件 |
| 2023年(令和5年) | 739件 |
| 2024年(令和6年) | 982件 |
| 2025年(令和7年) | 1,297件 |
※廃棄物回収車・ごみ処理関連施設の火災を除く。出典:総務省消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表(令和7年)」
製品別では、モバイルバッテリーが482件と最も多く、携帯電話機(93件)、電動工具(86件)、電動アシスト自転車・ポータブル電源(各51件)と続きます。家庭だけでなく、職場や作業現場でも起こりうる火災だといえます。
なぜ消えにくい?「熱暴走」の仕組み
リチウムイオン電池の火災が厄介なのは、「熱暴走」と呼ばれる現象が起きるためです。
熱が熱を呼ぶ連鎖反応
リチウムイオン電池の内部には、燃えやすい有機溶媒(電解液)が使われています。落下などの衝撃や劣化、過充電、高温環境などをきっかけに内部でショートが起きると、電池の温度が急上昇します。温度が上がると電池の内部で化学反応が進み、さらに発熱する――この連鎖が熱暴走です。
炎が消えても再び燃える
熱暴走が始まると、表面の炎をいったん消しても、電池の内部では発熱が続いています。そのため、しばらくして再び発火する「再燃」が起こりやすいのが特徴です。また、製品の中に複数の電池(セル)が入っている場合、1つのセルの熱が隣のセルに伝わり、次々に燃え広がることもあります。
火花や煙が勢いよく噴き出す
熱暴走を起こした電池は、ガスや火花、煙を勢いよく噴き出すことがあります。近づいて消そうとすると、やけどをしたり煙を吸い込んだりする危険があります。
リチウムイオン電池が発火したときの初期消火の手順
東京消防庁は、リチウムイオン電池が発火したときの対処として、次のような手順を示しています。
- 近寄らない:火花や煙が激しく噴き出しているときは、無理に近づかず距離をとる
- 消火する:噴出が収まったら、大量の水や消火器で消火する
- 冷やす:消火後も電池を水で十分に冷やし、安全に水没させる
- 通報する:安全な場所から119番に通報する
ポイントは「消火」だけでなく「冷却」までを行うことです。表面の炎が消えても内部の熱が残っていると再燃するおそれがあるため、十分に冷やすことが大切です。また、身の安全を最優先し、手に負えないと感じたらすぐに避難と通報を行ってください。
リチウムイオン電池火災でよくある誤解
「炎が見えなくなれば安心」
熱暴走を起こした電池は、炎が消えたように見えても内部が高温のままになっていることがあります。消火後も目を離さず、十分に冷やしたうえで、可燃物から離れた安全な場所に置いておきましょう。
「小さな電池だから大した火にならない」
モバイルバッテリーやスマートフォンの電池は小さくても、勢いよく炎や煙を噴き出すことがあります。周囲にカーテンや布団、紙類などがあると、そこから一気に燃え広がるおそれがあります。
「熱くなっても冷ませば大丈夫」
充電中や使用中に異常に熱くなる、膨らんでいるといった症状は、電池が劣化・損傷しているサインです。冷めたからといって使い続けず、使用を中止してメーカーや販売店に相談しましょう。
初期消火に使える道具と選び方
リチウムイオン電池の火災に備えるうえで、身近な道具にはそれぞれ得意・不得意があります。
| 道具 | 特徴 |
|---|---|
| 水(バケツ・水道) | 冷却効果は高いが、すぐに大量の水を用意できない場所も多い。電気製品の近くでは感電に注意が必要 |
| 粉末消火器 | 多くの建物に設置されている。炎を抑える効果はあるが、冷却効果は小さく、使用後は粉末の清掃が必要 |
| リチウムイオン電池対応の簡易消火具 | 軽量で手元に置きやすい。冷却・浸透によって再燃の抑制をうたう製品もある |
選ぶときは、「冷却できるか」「すぐ手に取れる場所に置けるか」「誰でも扱えるか」の3点を確認するとよいでしょう。
片手で使える初期消火スプレー「Key-L119S」
SANOUTECが取り扱うエアゾール式簡易消火具「Key-L119S(キーエル119S)」は、水や一般的な消火器では消しにくいリチウムイオン電池の火災に対応した初期消火スプレーです。
- 4段階で熱暴走を抑える:冷却・浸透・窒息・安定化の4つの作用で熱暴走を抑え、再燃を防ぐとされています(メーカー資料による)
- 約28秒の放射時間:一般的な粉末消火器(約10〜15秒)の約2倍の時間、消火液を放射できます
- 540gで片手で使える:470mlの浸潤液を充填しながら、片手で持ち運べる重さです
- 2〜4mの放射距離:火元から距離をとって放射できます
- 後片付けがしやすい:粉末が飛び散らないため、使用後の清掃が容易です
リチウムイオン電池火災のほか、小規模な普通火災、天ぷら油火災、電気火災、ストーブ火災などにも対応しています。
よくある質問
Q. リチウムイオン電池の火災に水をかけてもよいですか?
A. 東京消防庁は、噴出が収まった後に大量の水や消火器で消火し、その後も水で十分に冷やすよう呼びかけています。ただし、火花や煙が激しく噴き出している間は近づかないでください。
Q. Key-L119Sがあれば消火器は不要ですか?
A. いいえ。Key-L119Sは「簡易消火具」であり、消防法で設置が義務付けられている消火器の代わりにはなりません。法定の消火器に加えて、手元の備えとしてご活用ください。
Q. リチウムイオン電池火災への性能は公的に認証されていますか?
A. 国内にはリチウムイオン電池火災に対する公的な評価基準がないため、消防庁および日本消防検定協会の認証・評価の対象外です。製品自体は総務省消防庁の自己表示制度の規格に適合しています。
まとめ:消火だけでなく「冷却」と「再燃防止」まで考えた備えを
- リチウムイオン電池等の火災は2025年に全国1,297件と増加が続いている
- 熱暴走により内部の発熱が続くため、炎が消えても再燃しやすい
- 噴出中は近寄らず、収まってから消火し、十分に冷却する
- すぐ手に取れる場所に、冷却効果のある初期消火の道具を備えておくことが大切
リチウムイオン電池を使う製品が身近にある場所には、いざというときに片手で使える初期消火の備えを置いておきましょう。導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
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