「橋の継ぎ目から雨水が漏れている」「伸縮装置のゴムが傷んでいるが、装置ごと交換するほどの予算がない」「交通規制の時間をできるだけ短くしたい」――橋梁の維持管理を担当されている方から、こうしたご相談を多くいただきます。
本記事では、橋梁伸縮装置の劣化した止水ゴムだけを取り替える補修工法「SMジョイント(ゴム劣化取替工法)」について、工法の概要から特長、施工の流れ、適用範囲、よくある質問までをわかりやすく解説します。伸縮装置の補修方法を比較検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
SMジョイント(ゴム劣化取替工法)とは?
SMジョイントは、橋梁伸縮装置のうち劣化した伸縮ゴムの部分だけを撤去し、新たに伸縮性に優れた樹脂材を充填する「橋梁用伸縮装置補修工法」です。ジョイントの後打ちコンクリートを撤去しないため、経済性・施工性・止水性に優れ、建設廃棄物も少ない環境にやさしい工法です。
NETIS(国土交通省 新技術情報提供システム)に登録された技術であり、2022年には国土交通省の「橋梁伸縮装置止水部の補修に関する技術」に選定されています。日経コンストラクション(2022年2月28日号)や同誌別冊「NETIS登録技術2022」にも掲載されました。
SMジョイントの基本情報
| 工法名 | ゴム劣化取替工法(SMジョイント/SM-JOINT) |
|---|---|
| NETIS登録番号 | QS-180049-A |
| 選定・登録 | 国土交通省「橋梁伸縮装置止水部の補修に関する技術」選定(2022年)/実用新案登録第3155525号 |
| 材料 | 主剤・硬化剤・添加剤の3成分で構成される樹脂材(混合後に弾性ゴムへ変化) |
| 交通開放の目安 | 樹脂材充填後1〜3時間程度(施工時の気温により変動) |
| 低温性能 | -20℃の条件下で500%以上の伸び率 |
| 主な適用箇所 | コンクリート橋・鋼橋の突合せタイプの伸縮装置部分、荷重支持型ゴムジョイントなど |
なぜ「ゴムだけの取り替え」が求められているのか
伸縮装置の伸縮ゴムが劣化すると止水機能が失われ、橋の下へ雨水が漏れ出します。漏水は支承部の発錆・破損や、桁・床版のクラック(ひび割れ)の原因になります。また、劣化したゴムにはく離や浮きが生じると、走行車両を傷つけたり二輪車が転倒したりするおそれもあります。
従来は、後打ちコンクリートが健全であっても伸縮装置全体を取り替える方法が一般的でした。しかし、伸縮ゴムの耐用年数が10年ほどであるのに対し、伸縮装置全体の耐用年数は20年以上といわれます。ゴムが劣化するたびに装置全体を取り替えるのは、財政面で現実的ではありません。
さらに装置全体の取替工事では、既設装置を撤去するハツリ作業の振動で床版に微細なクラックが生じたり、アンカーをハンマーで打ち込んだりと、橋梁本体に負担をかけてしまいます。こうした課題を解決するために生まれたのが、ゴムだけを取り替えるSMジョイントです。
伸縮装置の劣化サインや放置した場合のリスクについては、橋梁伸縮装置の劣化・漏水の原因と補修方法の選び方で詳しく解説しています。
SMジョイントの6つの特長
1. 後打ちコンクリートを撤去しない
劣化した伸縮ゴムのみを取り替えるため、健全な後打ちコンクリートや既設の伸縮装置はそのまま活用できます。ハツリやアンカー打ち込みによる躯体への振動・衝撃を最小限に抑えられ、発生する建設廃棄物は除去したゴムのみです。
2. 3成分の樹脂材が弾性ゴムに変化
主剤・硬化剤・添加剤の3成分を混合すると、柔軟性のある弾性ゴムに変化します。伸縮性・止水性・耐久性に優れ、橋梁の伸縮に追従しながら止水性を確保します。アスファルトやコールタールを含まず、ほぼすべての化学物質に耐性があるのも特長です。
3. ハンドミキサーで施工でき、大型機械が不要
ハンドミキサー(シーリング用の撹拌機を推奨)があれば施工が可能で、大型機械は必要ありません。騒音・振動も少ないため、市街地や住宅地に近い橋梁、歩道橋でも施工しやすい工法です。
4. 施工時間(交通開放までの時間)を半分に
樹脂材充填後、1〜3時間程度が交通開放の目安です。既往の突合せ型ゴムジョイントの取り替えと比較して、交通開放までの所要時間を半分に短縮できるため、交通規制による渋滞などの影響を抑えられます。全体取替との費用・工期の考え方は伸縮装置の取替費用・工期を比較した記事をご覧ください。
5. 垂直部分にも施工できる「ノンサグ性」
垂れない性質(ノンサグ性)があるため、地覆などの垂直部分にも施工できます。路面から地覆まで連続的に充填できるので、端部からの漏水も防ぎやすくなります。
6. 寒冷地・低温域にも対応
-20℃の条件下で500%以上の伸び率を持ち、冬季に橋桁が縮んで目地が開く状況にも追従します。寒冷地や低温域の橋梁にも適用可能です。
22年間の長期暴露でも硬度は変わらず
SMシール材を22年間屋外に暴露した供試体と、フレッシュなシール材を比較した試験では、直射日光や雨風によって外観の厚みが1.5mm減少したものの、ゴムの硬度は同じ数値を示しました。長期にわたり弾性を保つ耐久性が確認されています。
SMジョイントの施工の基本的な流れ
実際の施工内容は現場条件によって異なりますが、おおまかには次のような流れで進めます。
- 事前調査:既設伸縮装置の種類・劣化状況・漏水の有無を確認します。
- 既設ゴムの撤去:劣化した伸縮ゴムのみを撤去します。後打ちコンクリートは残します。
- 下地処理:目地内の錆・油分・汚れ・残ったゴムなどを除去し、樹脂材が密着しやすい面をつくります。
- 樹脂材の撹拌・充填:3成分を均一に撹拌し、目地に充填します。
- 表面保護材の散布:充填後、表面保護のため珪砂(5号推奨)を散布します。
- 硬化・交通開放:1〜3時間程度を目安に交通を開放します。
樹脂材を既設部材としっかり一体化させるには、下地処理の品質が仕上がりと耐久性を大きく左右します。SANOUTECでは、薬剤や研磨材を使わずに錆・油分を除去できるレーザークリーニングによる下地処理もあわせてご提案しています。詳しくはSMジョイントの下地処理にレーザークリーニングを使う理由をご覧ください。
SMジョイントの適用範囲
SMジョイントは、コンクリート橋・鋼橋の突合せタイプの伸縮装置部分のほか、荷重支持型(簡易鋼製形式、ゴム+鋼製形式、ゴム製)の伸縮装置にも適用できます。もともと伸縮装置が入っていない小規模橋梁の目地や、新設の目地にも使用可能です。
なお、SMジョイントは伸縮装置そのものではなく伸縮性のある止水材です。輪荷重は既設のジョイントやコンクリートが支持します。既設装置の種類によっては適用できない場合もありますので、現状写真をもとにご相談ください。具体的な事例はSMジョイントの施工事例と適用範囲で紹介しています。
あわせて検討したいSANOUTECの関連製品
伸縮装置まわりの補修は、止水だけでなく、下地処理・段差・コンクリートの劣化対策まで一体で考えると効果的です。SANOUTECでは、SMジョイントと組み合わせやすい次のような製品・工法を取り扱っています。
| こんなお悩みに | 製品・工法 | 概要 |
|---|---|---|
| 伸縮装置そのものを更新したい | MMジョイントDS型 | 特殊バインダーとDS骨材による埋設型の橋梁伸縮装置。NETIS登録(QS-180019-VE)、2026年1月に「VE」評価を取得。 |
| 施工前に錆・油分を除去したい | ULT LASER(レーザークリーナー) | サビ・黒皮・油膜・塗料を非接触で除去。化学薬品不使用で二次廃棄物が出にくい。 |
| ジョイント部の段差を補正したい | ジョイントクリート | 水と混ぜるだけの超速硬型コンクリート補修材。コンクリート橋梁ジョイントの段差補正にも。 |
| 現場に電源がない・発電機を使いにくい | ポータブル蓄電池「タメルラボ」 | 静音・無臭で排気ガスを出さない大容量蓄電池。人通りの多い場所での作業に。 |
| 漏水で傷んだ床版・桁のコンクリート対策 | 完全無機質防水材「草薙」 | コンクリート内部に含侵して防水・強靭化・再アルカリ化を実現する改質防水材。 |
SMジョイントに関するよくある質問
Q. SMジョイントは伸縮装置の代わりになりますか?
A. なりません。SMジョイントは伸縮性のある止水材であり、それ自体が荷重を支持するものではありません。既設の伸縮装置や後打ちコンクリートが健全で、止水ゴム部分が劣化しているケースに適した工法です。
Q. 交通規制はどのくらい必要ですか?
A. 樹脂材充填後1〜3時間程度が開放の目安です(気温により変動)。既往の突合せ型ゴムジョイント取り替えと比べ、交通開放までの時間を半分に短縮できます。
Q. 冬場や寒冷地でも施工できますか?
A. SMジョイントの材料は-20℃の条件下で500%以上の伸び率を持ち、寒冷地・低温域での伸びにも優れています。施工時期や条件については事前にご相談ください。
Q. 自分の橋に適用できるか知りたいのですが?
A. 既設伸縮装置の種類によっては適用できない場合があります。現状の写真をお送りいただければ、適用可否を確認いたします。
まとめ:SMジョイントは「ゴムだけ取り替える」合理的な止水補修工法
- 劣化した伸縮ゴムだけを取り替え、後打ちコンクリートは撤去しない
- 3成分の樹脂材が弾性ゴムとなり、伸縮性・止水性・耐久性を確保
- ハンドミキサーで施工でき、交通開放まで1〜3時間が目安
- ノンサグ性で地覆の垂直部分にも連続施工、-20℃で伸び率500%以上
- NETIS登録(QS-180049-A)、国交省「橋梁伸縮装置止水部の補修に関する技術」選定
限られた予算の中で橋梁の長寿命化を進めるうえで、SMジョイントは有力な選択肢です。SANOUTECでは、レーザークリーニングによる下地処理から周辺の舗装補修まで、現場に合わせた補修をご提案しています。伸縮装置の止水・漏水でお困りの方は、お気軽にご相談ください。